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「今こそ平和を作り出すために」~戦後70年を覚えて~

ヤスクニ・社会問題委員会

 わたしたちは、戦後 70 年を迎え、集団的自衛権行使容認の閣議決定、特定秘密保護法お よび「安全保障関連法案」の強行採決という平和憲法無視の政治、福島の原発事故への対 処に表された人間軽視の経済政策、格差を固定して若年者と高齢者の生活を貧窮させる人 権侵害の諸政策に強い懸念を覚え、このような「平和」に対する脅威に対して、あくまで 反対することを表明します。 また、さまざまなデマ・恫喝・脅しによる嫌がらせにも屈せず、「戦争法案」に反対し、 デモを続けている中高生と教員、学生と学者、こどもを連れた母親、老若男女の市民、宗 教者、諸教会の一人一人の思いと行動に、心からの感謝と支持を表明します。これらの人々 こそ「平和をつくり出す者」であり、この国の戦後 70 年の歩みの最も善き実りを体現して いるというべきでしょう。 わたしたちは、この事態を評論しているのではなく、「平和をつくり出す者は幸いである」 という主イエスキリストの言葉を大切な規範としているのです。

 また、わたしたちは歴史 に向き合い、問うことを恥としません。何故なら、権力を嵩に着て、自分に都合の悪い過 ちを認めず、なかったと抹消する、あるいは事実を歪め責任を転嫁することは、混乱と戦 争の源となるからです。

 わたしたちは「日本キリスト教会信仰の告白」の冒頭で「わたしたちが主とあがめる神 のひとり子イエス・キリスト」と告白します。それは、主イエス・キリスト以外に服従す べき主人を持たないという意味です。これはわたしたちの決意であると同時に、歴史に対 する責任を伴う反省なのです。

 かつて、わたしたちは、その主人の支えと護りを信頼しきれずに、自分の手で「切れ目 のない対応」や「防御の手段」をもって教会を自分の財産のように守ろうとして、日本に 住む朝鮮の人々の教会を併呑合併し、朝鮮では教会とキリスト者に神社参拝を強要しまし た。戦後 45 年をかけてわたしたちは歴史に向き合い、真摯な一致した謝罪を行なうに至り ました。直接、文書を携えて当地を訪れた結果、韓国、共和国、台湾の諸教会から謝罪の 受け容れと和解を得たのです。

 もし、わたしたちが「あれは彼らの教会を守るためにしたこと」、「当時、国策に反する ことは出来なかったからやむを得ない」などと主張し、自らに都合よく無罪を決め込んで いたら、いまなお反目と嫌悪が続いていたでしょう。その経験からも、植民地支配と侵略 戦争を認め謝罪した村山談話、「従軍慰安婦」への国家の関与を認めた河野談話は、歴史と 正しく向き合い、被害を与えた近隣諸国からの信頼を回復するために必要な正しいもので あったと確信します。

 それだけに、過去の清算を曖昧にしたまま謝らないで済む方便を探すような「新たな首 相談話」は未来志向にはほど遠く、かえって信頼の回復を阻害し、平和への逆行となるに 違いないのです。

 戦前のこの国は数年に一度は軍事行動を起こし、大きく疲弊・荒廃しました。平和憲 法のもと、戦後 70 年の戦争に加わらない時期を経て、その疲弊・荒廃から立ち直って来た のです。逆に、戦後世界でも変わらずに、数年に一度軍事行動を起こして来たのはアメリ カ合衆国です。安倍政権は、躍起になって「安全保障関連法案」が戦争の抑止力となると 繰り返しています。しかしそれは、アメリカの戦争に常に加わり、日本全体をアメリカの 防波堤として差し出すということにほかなりません。矛盾という言葉の由来通り、そもそ も抑止力は軍拡競争を前提としていて、敵対関係を増幅させ、戦争の危険性を増大させる ものでしかありません。

また、政府の手によって、特定の外国の軍隊による侵攻の脅威が喧伝されています。「日 本を守るための切れ目のない備え」をするべきだと主張されます。しかし、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災の時、自衛隊員は約 20 数万人が震災復興のために動員されています。い わば一番防備が脆弱だったその時期、特定の国が攻める気配を見せたでしょうか。むしろ 支援のための義捐金を贈って来ています。現在の政権がマスコミ報道を統制し、他方でヘ イト・スピーチを野放しにし、「従軍慰安婦」の問題をなかったことにしようともくろんで も、人間の尊厳や命に目を向けない傲岸な姿勢が真の信頼を得ることはありません。

 わたしたちは、戦後 70 年を迎えた今日の状況に、旧約聖書の詩編第 2 篇に記されている 状況を思い起こします。そこでは戦いの危機を騒ぎ立て、打算に満ちた「力の同盟」以外 に途はないと主張し合い、見せかけの安心をふりまいています。また、政権を担う者達は 新約聖書の使徒言行録第 12 章に記されているヘロデ王を思い起こさせます。反対する者を 排除し、おもねる者に讃美の声を上げさせて満足しています。しかし、わたしたちは希望 を失ってはいません。聖書にはそのような勢力や人物の支配は一時期に過ぎないことを示 しているからです。

 同時に、わたしたちは、一時期のことだからと、沈黙してよいと考えません。わたした ちは、キリスト者として、真の平和を求め「安保保障関連法案」の廃案と国会議員の現行 憲法の遵守を強く求めます。戦後 70 年の今年を悪しき転換点にしてはなりません。

2015年8月15日
   日本キリスト教会 北海道中会
      議長 八田 牧人
   日本キリスト教会 北海道中会ヤスクニ・社会問題委員会
      委員長 古賀 清敬